由来2006年03月19日 12時22分44秒

ぽとっ。
秋。国道沿いに植えられたイチョウの木から銀杏が一つこぼれ落ちる。
街路樹として植えられるイチョウには本来雄の木が選ばれる。秋に実が落ちると臭くて汚らしくて厄介だからだ。それにも関わらず時に雌の木が混じるのは「見分けにくいから間違った」それだけである。
銀杏の実が発する匂いの成分は硫黄であるらしい。鼻をつまんで歩くもの。気にせずぐしゃりと踏みつぶすもの。あっという間に道の上は汚らしく、お洒落な人なら避けて通るような状態になってしまう。外側の柔らかい肉はその外見と匂いで触るのをためらわせるが、実際触ると人によってはかぶれてしまう。いいとこなしである。
匂いに苦心しつつゴム手袋で銀杏を拾う者もいる。拾った実の肉を剥ぐのがまた一苦労。まず袋のまま一週間ほど日なたに置き完全に腐らせる。その後手でもんだり足で踏んだりして肉を剥ぎ、ごしごしと洗う。一週間も干せばあのぶよぶよの肉の中にあったとは思えないほどに綺麗に尖った薄茶色の種が現れる。
この種は自らを閉ざすように硬い殻で覆われている。手で割る事はまず不可能だろう。ペンチを使って割るのも大変な硬さである上に力を入れ過ぎれば中の柔らかい実まで砕けてしまう。苦心してそれを割った者はやっとふうわりと薄皮に包まれた緑色の宝石に出会う事ができるのだ。
だから、

「お前は、ぎんなん!」
「へっ?」

煙草臭い落語研究会の部室で会長は私を指差して一言、そう宣言した。誰も異論を唱える事は無くあっという間に私の「芸名」が決まった。落語会で高座に登るときの名前である。
命名の理由は、その時の会長の頭によぎったものが何なのか、知る者は無い。

塩をふった炒り銀杏は非常に美味い。が、銀杏に含まれる4-0-メチルピリドキシンという成分がビタミンB6の作用を阻害する為、食べ過ぎると稀に中毒症状が出ることがある。小さな子供は特に危険らしい。
果たしてこちらの「ぎんなん」は、読みすぎ注意、といきますかどうか。

コメント

_ 木の目 ― 2006年05月02日 16時43分36秒

毒ですか、そうですか・・・

_ ぎんなん ― 2006年05月09日 00時07分02秒

毒にも薬にもならず美味しくもない物になるくらいならいっそ毒の方が…
なんて言いつつ、毒なぞ描けていない私です。むむむん。

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