音の出ないピアノ2007年11月01日 07時56分21秒

 来年の1月に写真展を開くことになった。

 以前私が参加したポストカード展を主催したギャラリーバーはその後閉店したのだが、マスターの自宅の一角を改装して、喫茶兼ギャラリーとしてようやく再開の運びとなった。挨拶がてらケーキを食べにいったところ、マスターから直々に話を頂いたのだ。

 テーマはどうする、
 写真のサイズは、
 額縁の色は、
 もう写真選んだ?
 なんというか、私より旦那のほうが心配したり浮かれたりしている気が、しなくもない。



 この間、ETVの日曜美術館を見ていたら、塩田千春という人の展覧会の告知があった。

 焼け焦げた、もう鳴ることのないピアノ。
 存在しないピアニストを取り囲む、観客のいない椅子。
 それらは無数の糸で互いに結ばれ、複雑に絡まり、糸は網のように繋がりながら上へと登る。
「音の出ないピアノを弾くという行為が、私が作品を作る行為と非常に似たものがあって」と、塩田千春本人のことば。

 音の出ないピアノを、「過去にそこにいた」人の気配が取り囲む。

 私はそれからずっと「音の出ないピアノを弾く行為」について考えている。
 弾いている人間に聞こえる旋律は、他の誰にも聞こえることはない。
 私が見た夢を他の誰も見ることができないように。
 孤独な行為だと思う。

 夢を形にする行為。

 何かを作るというのは、やはり誰かに何かを伝えようとすることだ。
 伝えようとする。
 投げる。
 届かない。
 それでも作る。伝えるために。



 写真にしろ、文章にしろ、私から出てくるモノはまだ自分のためのモノでしかない。
 意味のわからないぐしゃぐしゃとした排泄物でしかない。
 だから、写真展なんて本当はまだまだ早いんじゃないかと思っている。自分が何を感じて、何を伝えようとしているのか、私はまだ良くわかっていない。これからわかるようになるのかも、わからない。

 さて、私は写真を見た人に、
 文章を読んだ人に、
 それとも、特定の誰かに、
 何を伝えたいのだろう?



 関係ないが、現在私は「デジタル一眼レフ欲しい欲しい病」を発症している。
 今のところ治る見込みはない。

すらいど・しょう2007年11月24日 20時14分11秒

 至極唐突で申し訳ないが、スライドショーである。
 iPhotoというソフトで写真からスライドショーの動画を簡単に作る事が出来る。音楽はiPhotoに入っているサンプル曲を適当に指定したもの。
 (要QuickTime。音が出ます。文句はAppleに!)



 iLife '08 Photo Contestというのに、先日参加してきた。
 どう言う形式で写真を見せ、審査が行われるのか、当日Apple Storeに行ってみるまで全く知らない状態だった。そもそも私は福岡のApple Storeに行った事すら無かったのだ。
 まさか、マイクで名前を紹介され、「自己紹介をどうぞ」と言われるとは………。

 結論から言うと、参加賞をもらってきた。
 Appleのコンテストなので写真をスライドショーで見せることになるのは予想していたが、実際に会場で見てわかる事はいろいろあった。
 スライドショーという形式は一枚一枚というより流れで鑑賞するので、テーマが統一されしかもストーリーが感じられないと面白くない。
 画面が結構遠くて、細かすぎると伝わらない。
 でも、一番感じたのは「色」だった。

 ううーん、なんだか「色」に邪魔されている気がするぞ。

 色がくっきりと鮮やかなのはCanonのデジタルカメラの特徴(たぶん)だ。そこが好きでもあるのだが、見てほしい、見せたいと思う部分が色に紛れている。
 試しに白黒にしてみよう。



 ………あ、いいかも。

 そんな事をして遊んで終わりそうな三連休である。
 そろそろ写真展の準備しなくちゃ。

歩け!2007年11月25日 02時37分18秒

 Apple Storeに向かうバスの中で、とあるビルから下がっている垂れ幕が見えた。
「うひゃあああああああああ」
 森山大道の写真展ですと?
 日曜日までだ。
 全然知らなかった。こーんなもの(下の記事参照)に参加しなければ、気付かなかったよ。神様ありがとう。



 写真展の内容は今までのベストワークス数十点と、最新作「記録」から100点。
 ベストワークスは本当に私でも見た事のある有名な写真が並んでいた。
 「記録」は商業ベースでなく私的に撮影した写真を集めて刊行しているものらしい。そこから抜き出された写真はよく目にするような風景をすっと切り取ったスナップのような、だが確実に意志を持って、こうでしかあり得ないアングルで切り取られ、こうでしかないように焼き付けられた写真達だ。
 私が同じ風景を見たって、決してこんな風には撮れない。

 もちろん違いは沢山ある。
 私には基本的なデザインの知識すら無いのだから。
 だが、
 100点の写真を丹念に見て回っているうちに、
 私はこう言われているような気がした。


 歩け。
 そして、見ろ、と。


 閉じこもっていると、すぐに何も見えなくなってしまう。外の世界がある事すら忘れてしまう。
 歩かなくては。
 贅肉を付けている場合じゃないのだ。



 この日は一人で外出し、電車に乗り、バスに乗り、街中をぶらっとした。
 私が仕事以外で一人で外出する事は、実はあまりない。思いがけず写真展なんてあったものだから結局旦那を呼んでしまった(娘は迷惑そうに付いて来た)のだが、ほんの少しでも一人で居た時間は愉しいものだった。
 ふたりはたのしい。
 さんにんはもっとたのしい。
 だけど、ひとりもたのしいものなのだ。

 とりあえず、散歩からはじめよう。