振り込め詐欺がやってきた ヤァ!ヤァ!ヤァ!2006年09月11日 17時36分52秒

民事訴訟通達書
管理番号 (わ)75−3832号
この度、ご通知致しましたのは貴方の未納されました総合消費料金について契約会社、及び運営会社から民事訴訟として訴状が提出されましたことをご通知致します。以降、下記の裁判取り下げ期日を経て訴訟を開始させて頂きます。このままご連絡が無い場合には原告側の主張が全面的に受理され裁判後の措置として給料差し押さえ及び、動産物、不動産差し押さえを執行官立ち会いのもと、強制的に履行させて頂き裁判所執行官による「執行証書の交付」を承諾して頂きますようお願いすると同時に、債権譲渡証明書を郵送させて頂きますのでご了承下さい。
尚、民事訴訟及び、裁判取り下げ等のご相談に関しましては当局にて承っておりますので管理課局員までお問い合わせ下さい。その際、書面での通達となっておりますのでご本人様からご連絡頂きますようお願い申し上げます。
以上を持ちまして最終通達とさせて頂きます。
裁判取り下げ期日平成18年9月12日
0120-432-422 (管理課)
電話受付時間 9:00〜17:00 休日(土・日・祝日)
〒102-0083
東京都千代田区麹町5−12−17
民事訴訟管理事務局


正直、何度読んでも意味が分かりません
とりあえずwebで検索かけたら詐欺らしいので、面白いので晒しておきます。
去年から出回っているらしいし、こんな辺鄙な田舎までやってきたのだからきっと皆さんの所には既に行っているのでしょう。
ネット環境の無い友人にこんなハガキの相談をされたら、詐欺だと教えてあげましょう。
電話したら出るらしいですよ。誰か遊んであげてください(^_^)

追記 (9/12)
電話について。
わかっているとは思いますが、番号通知で電話すると相手に電話番号を知られます。
そこで言いくるめられでもすれば、新しいカモです。
気の弱い人、言いくるめられやすい人、カッとしやすい人は番号通知で電話しないでくださいね。
番号非通知(頭に184)や公衆電話からなら安全ですが、向こうも利益にならないので、相手にしてもらえない可能性があります。
私は面倒なので電話しません。あしからずー。

守宮(やもり)【上】2006年09月16日 17時08分30秒


夕食を食べていた母が小さくあ、と声を上げる。
「ほら、チョロ助。今日も来たよ」
母の嬉しそうな声を聞くと、決まって父も俺も不機嫌になる。母が見つめる先、ダイニングの窓には足指の丸い吸盤を貼り付かせ身体をくねらせた影が見える。
守宮だ。
「またか」
そう呟いた父の声はもう母の耳には届かない。いつもそうだ。諦めたように俺達は黙々と目の前の食事を空にする事に専念した。不機嫌になったって見た目は何も変わらない。父と母と俺、いつもの食事風景だ。
食器が触れる音と扇風機のモーター音だけが微かに響いている。

あんな気持ち悪い物に喜ぶ母親の姿を見るのはどうにも情けなくて不愉快で、でも俺達が不機嫌になるのはそんな事が理由じゃなかった。母がチョロ助の名前を口走ったが最後、その日の家事一切を放棄してしまうのだ。怒ろうが怒鳴ろうが罵ろうが母は頑として窓の前を動かない。これまでずっと父に従者のように仕えてきた母のその強情さを、父も俺もいまだに理解する事は出来ない。
ダイニングテーブルの上に置かれた食器を引く事すらせずに、惚けたように母はダイニングの窓を見つめ続ける。笑みの浮かんだその顔はもはや常人の物とは思えない。
「病院、連れて行こうか」
テレビの健康バラエティを見ながら冗談のように父が呟く。俺は無言で同意しながら、同時に父も俺も本当に連れて行く気なんてさらさら無い事も、よくわかっている。

初めから守宮だったわけじゃない。
一年程前、母は突然動物を飼いたいと言い始めた。その今までに無い口調と強情さに父も俺も驚き「母が全部面倒を見て家族に迷惑をかけない」という条件でしぶしぶ同意した。母は近所から雉子模様の子猫を一匹貰ってきた。
確かに面倒は全て母が見た。一日中猫の横にくっついていることすらあった。そして次第に母の家事が疎かになり始めた。見る見るうちに家の中は散らかりはじめ、俺達のシャツには皺が残るようになった。猫もじっとしているわけじゃない。俺の鞄に爪を立て、父のスーツに毛を残した。たまりかねて怒鳴りつける父の前でも、母は猫を抱き上げ赤ちゃん言葉でこそこそと猫に話しかけるだけで、父と目も合わせはしなかった。
そうして五ヶ月くらい経ったある日、猫が消えた。ドアが猫の身体ぶん開いていた。母は決して猫を家の外に出すことはなかったのに、だ。
母は泣き叫んだ。泣き叫びながら近所中を探し回った。その間は家事も、俺達も、完全に放置された。

母の狂乱にたまりかねて俺達は母に別のペットを与える事にした。なるべく手間もかからない、家も汚れないペット。セキセイインコを選んだのは父だった。
母の狂乱はひとまず治まり、昔のようにはいかないにしてもとにかく俺達は暖かい食事と清潔なシャツに対面する事が出来た。母は一日の半分を窓際に吊った鳥籠の横で過ごし、何やら話しかけたり、言葉を教えたりしていた。
インコは三ヶ月だった。吊り紐が切れて転がった鳥籠の中には毟られたような羽根しか残ってはいなかった。母はまた、狂乱した。

その後は金魚。三ヶ月後の朝、一斉に腹を上にして浮いていた。
その後は亀。長生きだからと飼ったミドリガメは一ヶ月後に倒れた水槽から逃げ、家の前の道路で車に轢かれていた。
多分、母は動物を飼う才能が無いのだ。
亀の轢死体を見た母は何故か今までのように騒ぐ事は無く、ただ放心した。ダイニングの椅子に一日中座り込んでいる母は置物のようだった。父と俺は置物を避けながら二人分の店屋物をかき込んだ。
そんな時、母は守宮と出会ったのだ。

】に続きます。

守宮(やもり)【下】2006年09月17日 17時18分28秒


】の続きです。

母がチョロ助と名付けた守宮は明らかに他の守宮とは違っていた。
後ろ足が一本無かったのだ。
その日、突然聞こえた母の泣き声に父と俺は驚いてダイニングに駆け込んだ。母が窓の前で子供のように泣きじゃくっていた。窓を見ながらカワイソウ、カワイソウと繰り返す母はもう父の事も俺の事も目に入らないらしかった。
母の守宮狂いが始まったのは、その日からだ。
母はチョロ助を見るたびに可哀想にと涙ぐみ、三本足で懸命に蛾を追う様子をまるで我が子の運動会でも観戦しているように手を叩いて応援した。本物の我が子がその声を苦々しく背中で聞いているのもお構いなしだ。
「ねぇ見て、チョロ助がね…」
時折母は俺に話しかける事もあったが、俺が見向きもしないのを見るといつも小さくため息をついた。俺はただうんざりと冬が来るのを待った。ナイター中継を見ていた父が小さく舌打ちをしたのが聞こえた。

「チョロ助、どうしたのかしら」
扇風機も必要なくなった頃、夕食の後片付けをしながらふと母が呟いた。「チョロ助」という言葉をここ数日耳にしていないのに俺は初めて気が付いた。朝晩は少し涼しい風が吹くが、勿論まだ冬眠をするような季節じゃない。
父が目だけでちらりと窓を盗み見た。(もう出てこなければ)と顔にはっきり書いてあるのが、同じ思いを持つ俺にはわかる。
「大変、チョロ助がいない」
そんな俺達の思惑をよそに、母は自分の言葉に自分で驚き、徐々にパニックになっていった。
「チョロ助、チョロ助」
呟きながら歩く。隣の窓、リビングの窓、廊下の、トイレの、寝室の、家中の窓を。
「いない。何処にもいない」
ぶつぶつと呟きながら母は暗くなり始めた庭に出た。

悲鳴が聞こえた。
悲鳴は長く長く続き、やがて泣き叫ぶ声へと変わっていった。
父と俺は庭に出た。母が梅の木の前でうずくまったまま叫んでいた。母の頭上の枝に、何かがあった。

三本足の守宮が枝に刺さって乾涸びていた。


母は俺が思うより早く狂乱から醒めた。かといって、置物になるわけでもなかった。能面のような顔で家事をこなし始めた母に父と俺はひとまず安堵した。
だが、数日後、俺は母の声で目覚めた。
真夜中だ。
部屋から明かりが漏れていた。脅すように宥めるように問う父の言葉を遮り、母は同じ言葉を繰り返し繰り返し叫び続けていた。

離婚してください。
もう貴方とは一緒にいられない。

朝、ダイニングに母の姿は無かった。新聞を読んでいる父はいつもと変わらない様子に見える。
「出て行ったの?」
訊かなくてもわかっていた。父の前にある朝食は焼いてない食パンとインスタントコーヒーだけだ。
「ああ」
俺も食パンを一枚掴み、ぎこちない手つきでコーヒーを入れた。父は新聞を畳みコーヒーを一口啜った。食パンはもさもさと味気なく、コーヒーは好みの濃さとはかけ離れていた。
開けてある窓から鳥がうるさく鳴いているのが聞こえる。
「父さん」
何故かはわからない。ふと、俺は前から気になっていた事を訊いてみようと思った。
「父さんなんじゃないの。猫も、インコも」
窓から秋の風が流れ込んできた。父は食パンを一口齧り、顔をしかめた後ぽつりと言った。
「守宮は俺じゃない」
「あれは百舌だよ」
俺は微かに笑った。鳥の鳴き声だけが耳についた。不味そうに朝食を食べる父と俺はまるで鏡写しだった。